歯周再生治療
2017年5月9日 火曜日
歯周再生治療の話④ 再生治療に用いられる薬剤 エムドゲイン
前回までは適応症(歯周病)と使用するタイミング(歯周外科処置)についてお話ししました
今回は実際使用するお薬についてお話します。
現在使用されているの薬剤の中でエムドゲインゲルというものをご紹介します。この薬剤は文字通りゲル状でお掃除によって歯石や細菌を取り除いたきれいな歯根表面に塗布します。
主成分は将来歯のもとになる歯胚から抽出精製したたんぱく質の一種です。
このエムドゲインゲルを歯周病で失われた骨欠損部に応用することで、歯が発生する時の環境を再現し、歯根膜や歯槽骨などを作る細胞を呼び込んで、歯周組織再生を促してくれるのです
ここで知っておいていただきたいのは人の骨はいつも作られたり破壊されたりを繰り返しているということです。
歯周病にり患しても、いつも歯を支える骨を作ろうとはしてくれているのです。ただそこに歯石や細菌といった骨を溶かす原因物質が存在しているため結果的に骨がどんどん溶けて行ってしまうのです
そのため歯周外科処置で歯石や細菌を取り除くとわずかではありますが必要なところには骨が再生してくれます。骨密度も増えます。
歯周病がそこまで重度ではない場合はこの歯周外科処置のみで骨が再生し、また骨密度が改善することで歯周病を食い止めることができます
一方で、骨の欠損形態によって、あるいは歯周病の重症度によっては歯周外科処置にエムドゲインゲルを併用し、より多くの骨を再生させ状態を改善することができるのです。
ただ、骨再生量にも限度があるため、例えば歯根の半分以上骨が溶けてしまった方に対してエムドゲインゲルを使用して、歯周病にり患する前の健康な状態にすることはできますかと聞かれるとやはり難しいと思います
2016年4月28日 木曜日
歯周再生治療③ 再生療法を行うタイミング
歯周再生治療①,②では歯周再生治療とは歯周病の患者様に行う治療であり、その中でも抜歯適応以外の、かなり広い範囲の病態の方に使用できるというお話をしました
では歯周病治療の、どのタイミングで行うのでしょうか。それが今回のお話のテーマです
ズバリ言う前に歯周病治療の流れをまずお話します
①歯周検査 レントゲン 口腔内写真などを用いて診査・診断
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②スケーリング:歯肉の上側、浅い部分の歯垢や歯石を除去することにより歯肉の炎症の改善
↓
③歯周組織再評価:ポケットや炎症の改善を評価します
↓
④スケーリング・ルートプレーニング:ポケットの奥に入り込んでいる歯垢や歯石を除去します
・ポケットが深い場合には麻酔を使用します
・数本づつ行うので数回に分けて行います
↓
⑤歯周組織再評価:治療によりどのくらい改善したかを評価します
↓
⑥歯周外科処置:処置後も5mm以上のポケットが残っている部位に対して外科処置を行い、歯石や炎症性組織を除去します(本数により回数がかかります)
↓
⑦歯周組織再評価:治療後の評価を行います
大まかにいうとこのような流れで治療は進んでいきます。
この流れでいうと再生療法を行うタイミングは⑥の歯周外科治療の段階で組織再生のお薬を使用することができるのです
そのため④のスケーリング・ルートプレーニング(SRP)を行いその後の再評価の時点ですべてのポケットが3mm以内に改善した場合は再生療法は適応ではなくなります。
ちなみにお話しすると上に書いた①~⑦の治療はすべて保険治療で行うことができます。⑥の外科治療を行う段階で再生療法を希望される場合は自費治療となります
2016年4月4日 月曜日
歯周再生治療の話② 歯周病の重症度
こんにちは
前回は歯周再生治療は『歯周病に対して適応となる治療法です』という話をしました。
それでは歯周病と診断された時点ですべての人に適応となるのかというとそうではなく、適応できるかは歯周病の重症度が大きく関係します
歯周病の重症度は歯を支えている骨の溶け方(溶けている方向)や溶けている量で決まります。
そしてそれを調べる検査が歯周ポケット検査やレントゲンです。
診断の結果、骨が著しく溶けている場合は再生療法が適応とならず抜歯になってしまうことがあります
歯周病は細菌感染により起こるため放置すればどんどん進行しますし、発症してしまうと歯みがきをいくら頑張っても、原因となる歯石やポケットの奥のプラーク(歯垢)は自分で除去することはできず、やはり進行してしまいまです。
そのため一度発症してしまった歯周病は、残念ながらどんなに高い歯磨き粉を使っても電動歯ブラシを使っても、専門的に治療するしか治す方法がありません(軽度な歯肉炎は適切なブラッシングで改善できます)
そのためやはり、ブラッシング時出血する、歯が動く気がする、歯ぐきがピンク色というより赤いなど気になる症状があれば少しでも早めの受診をお勧めします
尚、再生治療は抜歯適応以外の歯であれば比較的広い範囲の歯周病で用いることができます。
まずは御相談下さい
2016年1月23日 土曜日
歯周再生治療の話① 歯ぐきの腫れ
最近テレビやネットなどで歯周組織再生治療についての話題が多く取り上げられています
そのため当院にも再生治療について聞きたい、自分にも適応できるか調べてほしいという患者様がいらっしゃいます。
歯周病の自覚症状として歯肉の腫れ、出血が挙げられます。
歯周病は無症状で進行することが多く、歯肉の痛みや出血などの症状が出てから来院されることがほとんどです(重度の場合は歯が揺れる)。
しかし、この歯肉の腫れや出血が必ずしも歯周病かというとそういうわけではなく、診査してみると根の先端の炎症の場合があります。
症状が似ているため残念ながら自分では判断することが難しいです
根の炎症が起こる可能性として、以前、歯の神経を取ったことがある、、歯を強くぶつけたなどの既往が挙げられます。
そのため同じ細菌感染であっても歯周病は歯の周りの歯肉や骨から炎症が進行していくのに対して、根の病気は歯根の先端から炎症が進行していきます。
そうなると当然、治療法が異なり歯周病には歯周病治療、根の病気には根の治療を行わなくてはいけません。
前出の歯周組織再生治療は歯周病に適応の治療法です。
同じ歯ぐきの腫れといってもどちらであるかを判定するにはまず、レントゲンや診査を必要がありますので
このような症状をお持ちの方は早めに受診されることをお勧めします
※両者に同時に罹患していることもあります